6月7日にNAJATの呼びかけで行った「武器見本市(ユーロサトリ)に出展
しないで!軍需企業申し入れ」のご報告です。今回はとりわけ「民生品の
出展だから問題ない」との企業側の論理にいかに対抗するのかが問われま
した。「軍学共同」でも焦点となっている軍民両用(デュアルユース)技
術をどうとらえるのかという問題です。
ジャパンセル、藤倉航装あての要請書では、後半でその点を強調していま
すのでぜひご一読ください。今後も粘り強く働きかけを続けていきたいと
思います。
<ジャパンセル、藤倉航装あて要請書>
<NECあて要請書>
なお、NAJATのブログに当日の写真や要請書を掲載しています。こちらも
ご覧いただき、拡散などの際にご活用いただけるとありがたいです。
<ユーロサトリ出展企業に申し入れ!>
———————————-
【報告】
「武器見本市(ユーロサトリ)に出展しないで!軍需企業申し入れ」
6月7日午後、武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)呼びかけの「武器見本
市(ユーロサトリ)に出展しないで!軍需企業申し入れ」を行いました。
3日に取り組んだ「死の商人にならないで!軍需企業めぐり」に続いての
怒涛の連続アクションです。
「ユーロサトリ」とは隔年の6月頃にフランス・パリで開かれる世界最
大級の武器見本市です。武器輸出三原則が撤廃された直後の2年前には、
日本の軍需大手8社と中小4社が初出展しました。ところが今回は、三菱重
工をはじめとする大手6社が出展を断念。危機感を感じた防衛装備庁は、
「下町ロケット」を合言葉に、「背水の陣で中小に賭ける」との姿勢で臨
んでいます。
今回、大手で2回目の出展を決めたのはNECのみで、初出展は三菱電機。
他に、ジャパンセル、藤倉航装が2回目の出展です。防衛省との取引があ
るのはここまでで、他は取引のない中小企業が初出展するそうです。
NAJATでは、それでも出展する企業に対して、しっかりと反対の意志を
伝えようと、3社に絞って要請書を届けることにしました。
直前の案内に応えて駆けつけたのは総勢9人。最初は町田市にあるジャ
パンセル。2年前と同様に、東日本大震災後に防衛省からの要請を受けて
開発した携帯型サーチライトの出展を予定しています。事前のアポイント
の際には、「軍用ではなく災害用」「防衛装備庁にこうした申し入れがあ
ることを伝えたい」などと言われていました。
多摩境駅からてくてくと歩いて、まちだテクノパーク内にあるジャパン
セルに到着。受付で連絡すると「会議室に上がってきてください」と想定
外の応答。全員がスリッパに履き替え会議室に入り、待ち受けておられた
出展担当の営業部長さんと面談しました。軍需企業めぐりで要請書の受け
取りを拒否した富士通や東芝、今回のNECとは対照的です。
出展中止を求める要請書とツイッターで集めた「軍需企業に言いたい」メ
ッセージを提出したうえで、部長としばらくやり取り。部長からは「警察
や消防の方もショーを見に来られる。人命救助や災害対策で世界の人々の
お役に立ちたい」「トレーサビリティー(流通経路の追跡)はやっている。
経産省と最終エンドユーザーとなる代理店を確認しているが、そこから先
はわからない」「不適切な用途に使われ、契約が破られたときには契約不
履行となる」「モラルハザードにならないようにしたい」などとコメント。
参加者からは、「たとえ民生品の出展といえども、軍事転用を完全に防
ぐことはできない」「企業の責任として、軍事転用を許さないための措置
をもっと強化すべき」「ホームページで軍事転用は認めない旨を明確に表
明してはどうか」「今回中止できなかったとしても、次回のユーロサトリ
への出展は断念してほしい」などの要望を伝えました。
3日と7日に訪れた7つの企業の中で、会議室で対話できたのはジャパン
セル1社のみ。市民と向き合う真摯な姿勢に、今後も継続的に対話してい
ける可能性を感じました。
2社目は田町にあるNEC(日本電気)。大手が軒並み出展を見合わせる中、
懲りずに無線通信システムなどを出展する予定です。事前のアポイントで
は要請書の受け取りを理由も示さず拒否。こうした要請には「是々非々で
対応している」とのことで、よろしくないと判断されたようです。
そびえ立つ高層の本社ビルに出向くと、9人の参加者を上回る12人もの
警備員が正面玄関の50メートル手前で私たちをブロック。NECのワッペン
を付けた警備員が、問いただしても終始無言を貫く一方で、アルソックの
警備員は「総務から社の方針として受け取れないと聞いている。理由は言
えない」と高圧的な対応でした。
強く抗議したうえで、横断幕を広げて、次々とマイクアピール。近くの
歩道で行ったチラシ配布の受け取りも良かったです。最後に、正面にある
立派な社名看板を撮影しようとすると、警備員が慌てて立ちはだかる始末
でした。それにしても、3日の富士通、東芝に続き、名だたる大手企業の
傲慢な姿勢は情けないものがあります。私たちは抗議ありきではなく、説
得しようと訪れたに過ぎません。NECの強硬な姿勢は、武器輸出が物言う
市民を蔑視しながら進められていることを浮き彫りにしました。
最後の3社目は戸越銀座の近くにある藤倉航装。前回は自衛隊向けパラ
シュートなどを展示したものの、輸出管理の制限により性能などをPRで
きなかったとして、今回は独自に考案した民生用のパラシュート技術を紹
介する予定とのこと。
事前にアポイントを取っていたものの、到着が遅れたため電話すると、
担当者は「会社を離れるので守衛に受け取らせる」との対応。戸越銀座商
店街を抜けて会社に出向くと、少し待たされた後で社員らしき人が登場。
ところが、開口一番「受け取れません」。驚き理由を尋ねると、「一人で
来ると思っていたのに、こうした抗議まがいのやり方ではダメ」「要請書
の内容が納得いかない」などと述べた後、今度は「理由は言えない」と言
ってみたり、思いつきでコロコロと変わる混乱ぶり。名前と役職を聞いて
も「答えない」の一点張り。「では、後日郵送します」と伝えると「郵送
されても読まない」とまで言ってのけました。
A4で1枚の紙を受け取ることがどうして出来ないのか、企業の傲慢さを
またしても見せつけられました。受け取りを拒否した企業には郵便で要請
書を送付する予定です。
3日の軍需企業めぐりに続くハードな日程ながら、武器輸出ヘの「NO!」
の意志を伝える確かなアクションになったと思います。企業の対応に見ら
れた「幅」は今後の取り組みにとってのヒントにもなるものでした。参加
された皆さん、ご注目いただいた皆さん、お疲れ様でした。(文責:杉原)
※ぜひ様々な個人、団体でも軍需企業に声を届けてほしいと思います。な
るべくていねいなメッセージで。直接訪問される場合には、窓口などをお
知らせできますのでご連絡ください。
____今回の訪問先____
(1)ジャパンセル
(〒194-0215 町田市小山ヶ丘2-2-5-11)
最寄り駅:京王相模原線 多摩境駅
(TEL)042-798-4621 (FAX)042-798-4679
☆代表取締役社長 深澤篤。1982年設立で精密光学ガラス部品を製造。社員
は約50人。前回に続いて災害救助用の携帯型特殊サーチライトを出展予定。
2014年の初出展の際、メディアの取材に対して深澤社長は「今の景気が悪
い中で仕事を作らないといけないということで、そっちの方を優先して考
えています」とコメント。
(2)NEC(日本電気)
(〒108-8001 港区芝5-7-1)
最寄り駅:JR田町駅、都営三田線三田駅
(TEL)03-3454-1111(代表)
(NECへのご質問・ご意見) https://jpn.nec.com/cgi-bin/cs/opinion_form.cgi
☆代表取締役執行役員社長兼CEO 新野隆。1899年設立。2014年度の防衛省
との契約実績は287件、1013億円と第3位。野外通信システムや固定式警戒
管制レーダー装置などを納入。軍需関係は府中事業場(府中市日新町1-10)
が中心。前回は無線機や顔認証機などの情報通信システムを出展。
(3)藤倉航装
(〒142-0063 品川区荏原2-4-46)
最寄り駅:東急池上線戸越銀座駅、都営浅草線戸越駅
(TEL)03-3785-2111 (FAX)03-3784-0416
☆代表取締役社長 長井弘。1939年設立。「はやぶさ」カプセル回収用パ
ラシュートを開発したことをPR。前回は自衛隊が使用するパラシュート
や救命胴衣を展示。今回は独自に考案した民生用パラシュートの開発・設
計技術を出展。品川は本社機能のみで、製造工場は福島県田村市船引町船
引字卯田ヶ作115-25。
———————————-
<6月3日の軍需企業めぐりのご報告はこちら>
<NAJAT講座 第2回「『世界』武器輸出特集を読む」>
6月19日(日)14時~16時30分、飯田橋しごとセンター セミナー室