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NAJAT講座:武器貿易条約(ATT)第4回締約国会議に向けて ~議長国日本の政府と市民の役割を考える~

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6月19日に、明治大学国際武器移転史研究所の榎本珠良さんを再びお招きし、今度は武器貿易条約と日本の役割について解説いただきます。是非ご参加ください。

> お申し込みはこちらから > https://goo.gl/6u9ork

【趣旨】
8月20日(月)から24日(金)まで、日本で武器貿易条約(ATT)第4回締約国会議が開催されます。ATTは、2013年4月の国連総会で採択され、2014年12月に発効した、通常兵器の移転を規制するための条約です。しかし、武器貿易の透明性の向上が目指されたにも関わらず、提出されている報告書の内容は不透明で部分的なものが多く、報告書を提出しない国も多くあります。また、ATTの発効直後から、イエメンに空爆を続けているサウジアラビアに対して、イギリスをはじめとするATT締約国が武器輸出を続けていますが、これに対しては条約違反が指摘されています。
そもそもATTとはどのような条約なのか、日本の「防衛装備移転三原則」とはどう違うのか、今回の締約国会議では何が話し合われるのか。議長国である日本の政府と市民に求められる役割とは何か。日本で締約国会議が開かれるこの機会に、ATTの成立以前から国際会議をウォッチしてこられた榎本珠良さんをお招きして、ともに考えてみたいと思います。ぜひ、ご参加ください。

【日時】2018年6月19日(火)18:30-21:00 (18:15開場)
【場所】明治大学駿河台キャンパス グローバルフロント2階 4021教室
【アクセスマップ】http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
【キャンパスマップ】http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/campus.html
【バリアフリーマップ(PDF)】http://www.meiji.ac.jp/learn-s/sgg/6t5h7p00000ifk6m-att/surugadai.pdf

【登壇者】
報告者:榎本珠良 明治大学研究・知財戦略機構専門研究員(国際武器移転史研究所)
司会・コメント:杉原浩司

【主催】武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)
【共催】明治大学国際武器移転史研究所
【当日資料代】500円
【定員】60人
【参加方法】事前予約制です。2018年6月18日(月)までに、参加登録フォームにアクセスいただき、ご記入・送信ください。
※いただいた個人情報は、NAJATからのご案内以外の目的には使用いたしません。また、2018年6月18日(月)より前に定員(60人)に達しましたら、その時点で締め切りとさせていただきます。

【問い合わせ先】
武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)
anti.arms.export@gmail.com
【報告者プロフィール】
・榎本 珠良(えのもと たまら): 明治大学研究・知財戦略機構専門研究員(国際武器移転史研究所)。2010-2013年に国連で行われた武器貿易条約(ATT)交渉会議と準備会合4回、および2015年以降の第1-3回締約国会議の全てに参加して調査を行う。主な著作に『国際政治史における軍縮と軍備管理:19世紀から現代まで』(2017、編著:日本経済評論社)、Controlling Arms Transfers to Non-state Actors, History of Global Arms Transfer, No. 3 (2017)、「2017年9月の武器貿易条約(ATT)第3回締約国会議に向けて」『国際武器移転史』第4号(2017)、「2016年8月の武器貿易条約(ATT)第2回締約国会議に向けて」『国際武器移転史』第2号(2016)など。

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新アクションシート完成!

武器輸出反対アクションシート6.0
「死の商人」をボイコット! 三菱電機は防空レーダーをタイに売らないで!

ダウンロードする
4月1日で武器輸出三原則の撤廃から丸4年。幸い完成品の輸出実績はゼロです。しかし3月、国家安全保障会議(NSC)による承認を受けて、三菱電機がタイ空軍の防空レーダー入札に参加。欧米の軍需企業と競っています。タイ政府は今春にも結論を出します。
もし受注に成功すれば、かけ声倒れに終わってきた武器輸出にはずみがつく恐れがあります。同社はすでに日英ミサイル共同開発にも参加しており、戦闘機から発射する新型の空対空ミサイルの輸出で利益を得ることを狙っています。
私たちは、武器輸出の“確信犯”になった三菱電機を止めるために、消費者としてボイコットすることを呼びかけます。商品の不買とハガキの力によって、安倍政権を武器輸出の実績ゼロで退陣させましょう。

レーダー輸出の3つの問題点

① 完成品輸出の最初の実績に
これまでは軍需企業の経験・ノウハウの不足や、「レピュテーションリスク」(評判の悪化による業績低下)を気にしたために失敗続きだった武器完成品輸出の初の「成功体験」となることで、武器輸出に拍車がかかります。

② 軍事政権への武器輸出
現在のタイは、2014年に軍がクーデターで政権を掌握した軍事政権です。民政移管は先送りされ、5人以上の政治集会が禁止されるなど、表現の自由や政治活動の自由は抑圧されています。憲法9条下での武器輸出自体が問題ですが、軍事政権への武器輸出は論外です。

③ 中国包囲網づくりで米国の戦略を肩代わりする
今回の武器輸出は、現在日本が進めている中古武器の東南アジア諸国への無償譲渡と同様に、米国主導の中国包囲網づくりの一部を肩代わりしようとするものです。かつて武器輸出三原則が掲げた「紛争を助長しない」との理念に真っ向から反しています。

もはや三菱電機製品不買しかない! 〈不買できる製品の例〉

液晶テレビ「REAL」
冷蔵庫「MXシリーズ」
アルカリ乾電池「EX」
掃除機「風神」
炊飯器「本炭釜KAMADO」
エアコン「霧ヶ峰」

ツイッターで拡散を!ハッシュタグを付けてつぶやいてください。
#三菱電機不買 #BoycottMitsubishiElectric
例:炊飯器買い換えるけど三菱電機はやめとこう #三菱電機不買

◆このアクションシートは、1枚10円でご希望の部数をお送りします。
ぜひ、身近な人たちに広めてください。送料は無料です。
→メールかお電話でNAJATまでお名前、送付先、枚数をご連絡ください。

メール anti.arms.export@gmail.com

声明:武器輸出三原則撤廃から4年

NAJAT声明:
武器輸出三原則撤廃から4年
実質的「壊憲」を推し進め、平和主義にとどめを刺す明文「加憲」をもくろむ
安倍政権に今すぐ市民の引導を

 今から4年前、2014年の4月1日、安倍政権は歴代内閣が曲がりなりにも
維持してきた「武器輸出(禁止)三原則」を撤廃し、まったく逆の意味を
持つ「防衛装備移転三原則」を閣議決定しました。稚拙で嘘のような「改
ざん」により、武器輸出が国策となりました。
 わずか3か月後の7月1日、これも歴代政権が遵守してきた憲法解釈を閣
議で変更し、集団的自衛権の行使容認に道を開きました。

 それからというもの、安保法制の強行採決などに見られるように、坂を
転がり落ちるごとくに「平和主義」は空洞化しています。同時に、「森友
・加計学園」問題を典型として政治家の言動は劣化し、官邸に人事権を握
られた官僚も倫理を失い、公文書の改ざんにまで至りました。近隣諸国の
脅威がヘイトスピーチも交えて煽られ、メディアは権力の意向を忖度し、
一部マスコミはすでに虚偽を事実のように装った「フェイク・ニュース」
を垂れ流して、世論を誘導しようとするまでになっています。
 そしてこの1月、安倍首相は2018年中の「憲法改正」発議への意欲を表
明し、党内の消極論さえ強引に黙らせて9条改変に前のめりになっています。

 さらに、軍事費は歯止めを失い膨張するばかりです。南西諸島への対艦
ミサイル・レーダー基地建設、秋田と山口へのイージス・アショア(陸上
型の弾道ミサイル迎撃システム)設置など、戦争へのリスクを高め住民を
危険にさらす企てが進められています。さらに、「専守防衛」を前提とし
た武器体系を大きく逸脱する「敵基地攻撃兵器」の購入や研究までがまか
り通っています。軍学共同の動きは日本学術会議や研究者・市民の抵抗に
あいながらも依然として続き、科学技術政策の軍事化も、総合科学技術・
イノベーション会議に防衛大臣や防衛装備庁幹部が参加するなど、新たな
段階に入っています。

 ただ、安倍政権が「成長戦略」に位置づけた武器輸出はかけ声倒れに留
まっており、完成品の輸出はいまだにゼロです。実績作りを焦る防衛装備
庁は、イエメンへの無差別空爆に現在進行形で参加しているアラブ首長国
連邦(UAE)に、川崎重工製のC2輸送機を輸出しようとしています。もは
や「紛争当事国には売らない」との建前すら吹き飛んでいます。また、三
菱電機製の防空レーダーのタイへの輸出の動きが急浮上し、早ければ4月
中にも結果が出ると見られます。

 さらに、中古武器の無償譲渡にも道が開かれ、東南アジアに練習機や対
潜哨戒機を引き渡す動きが進んでいます。無償譲渡のみならず、修繕費ま
で日本が負担する「武器輸出版ODA」の創設すら検討されています。武器
の共同開発では、三菱電機が参加するイギリスとの空対空ミサイル共同開
発が進展を見せ、試作品づくりに入ろうとしています。
 国際紛争を武力で解決する愚かさを知り、訣別したはずの日本が、武器
を売ろうと企み、自らの戦力も展開しつつあることに、私たちはもっと声
を上げなければなりません。

 新たな紛争に満ち、壊れかけている世界を前にして、市民がもっと強く
なり、連帯することが求められています。戦争で儲け生命を軽んじる政治
家や軍需企業に対する異議申し立てを強化し、戦火のもとにある最も弱い
人びとを守らなければなりません。
 この国の民主主義のために、東アジアに持続可能な平和を構築するため
に、そして、世界を壊さないために、私たちは声を上げ続けましょう。不
正義と憲法違反に目を光らせ、武器の輸出にも輸入にも反対していきまし
ょう。

 安倍政権を一日も早く退陣させることが、この政治と倫理の劣化を止め、
平和憲法と民主主義システムを防衛する上で欠かせないことは言うまでも
ありません。今がその決定的な瞬間です。私たちは武器輸出の実績ゼロの
ままで安倍政権を退場させるために、力を尽くしていきます。

2018年4月1日 武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)
Photo:
creative commons
https://pixabay.com/en/nature-plant-summer-flower-bright-3299783/

イベント:「最悪の人道危機」イエメン内戦のいま ~国際社会から忘れ去られた紛争の真実~

内戦で、多くの犠牲者を出しているイエメン。サウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)は、イエメンのフーシ派を攻撃するとして無差別空爆を続けています。一方、フーシ派はイランの援助も受け、弾道ミサイルで反撃。内戦は近隣諸国を巻き込んで、長期化しています。この内戦により、イエメンでは840万人が飢餓に直面し「世界最悪の人道危機(国連声明)」に陥っています。
にもかかわらず、日本政府は航空自衛隊が擁する最新の輸送機である川崎重工製の「C2」を、紛争当事国であるUAEに輸出することを検討中です。
イエメンの取材に成功し、2月11日に帰国したフォトジャーナリストの久保田弘信さんに現状を報告してもらいます。

>チラシはこちら20180427_yemen_flyer_n_s

日時:4月27日(金) 18時30分~21時
場所:文京シビックセンター 4階シルバーホール
地下鉄 後楽園駅(4a、5番出口徒歩1分)、春日駅(文京シビック連絡口)
http://www.city.bunkyo.lg.jp/shisetsu/civiccenter/civic.html
資料代 800円

講師:久保田弘信さん(フォトジャーナリスト)
<プロフィール>
大学で物理学を学ぶが、スタジオでのアルバイトをきっかけにカメラマンの道へ。旅行雑誌の撮影で海外取材をこなすうちに、ひとりのパキスタン人と出会いパキスタンに赴く。パキスタンでアフガン難民を取材したことをきっかけに本格的にジャーナリストとしての仕事を始める。9.11事件の以前からアフガニスタンを取材、アメリカによる攻撃後、多くのジャーナリストが首都カブールに向かう中、タリバンの本拠地カンダハルを取材。またパキスタンに流出する難民を取材。難民の子どもたちの素顔をとらえた個展を多数開催。以来、アジア、中東を舞台に取材を続ける。

◆公式HP http://photokubota.web.fc2.com/
◆公式ブログ http://kubotahironobu.blog53.fc2.com/
◆写真集「僕が見たアフガニスタン」
DVD「アフガニスタン伝えきれなかった真実」販売ページ
http://kubotaphoto.cart.fc2.com/

主催:イエメン内戦を知る講演会 実行委員会
(連絡先 090-6185-4407 メール anti.arms.export@gmail.com )
[呼びかけ人]佐藤真紀、井筒高雄、志葉玲、並木麻衣、小寺隆幸、杉原浩司
※武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)が呼びかけ、NGOの有志と共につくる
実行委員会です。

【報告2】「専守防衛」を投げ捨て、歯止めなき軍拡に道ひらく 敵基地攻撃兵器の導入に反対する緊急院内集会

3月6日に衆議院議員会館において、「専守防衛」を投げ捨て、歯止めなき軍拡に道ひらく 敵基地攻撃兵器の導入に反対する緊急院内集会を主催しました。(青井さんの講演録はこちら

 

杉原浩司(NAJAT代表)

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「先取り壊憲」としての「敵基地攻撃兵器」導入

今回の敵基地攻撃兵器の導入は、「安保法制」に匹敵するぐらいの既成事実になると思う。今日の集会も本当は予算審議が衆議院の段階でセットすべきだったが、遅くなってしまった。私たちの取り組みもまだ弱いが、憲法学や平和学などの方々にもっと声をあげてほしい。
今回の動きは憲法9条の改悪を先取りしていくものだ。安保法制もそうだし、武器輸出解禁もそうだったが、それらに次ぐ最終的な憲法9条の骨抜きだと思う。今回、予算を見ると8月末の概算要求の段階で研究費が付き、これだけでも問題だったが、年末になって突然、小野寺防衛大臣がアメリカとノルウェーの3種類の長射程巡航ミサイルの購入費を計上した。しかも、その中のJASSM-ERというロッキード・マーチン製のミサイルは、F15戦闘機を大幅に改修しないと搭載できない。すごく予算もかかる。こういうズサンな状態で予算を付けており、拙速な導入だ。
なぜこうした導入が可能となったのか、3点をあげたい。1点目は私たち主権者と立憲野党が舐められていることだ。小野寺さんは大臣になる前に『航空情報』という雑誌のインタビューでこう言っていた。「自分は他の政治家が言わない中、メディアで『敵基地反撃能力を持つべきだ』と勇気をもって発言したが、それに対する反対の声はほとんど届いていない」と。しかも、産経新聞の世論調査では敵基地反撃能力に賛成する声が多かったと。彼はそれによって自信を深めた。しかも、かつて自民党の検討チームの座長をやって、イージス・アショアと敵基地反撃能力の保有を提言した張本人だ。自分が提言した内容を大臣になって実践している。許せないのは、「敵基地攻撃兵器ではありません」とか「専守防衛には反しません」と平気で言っている。誰が見たってそんなのはウソだ。そういうデタラメをまかり通らせているのは、私たちの側の追及の甘さだと思う。
2点目は、今までアメリカは日本が敵基地攻撃兵器を持つことには非常に慎重だった。アメリカが矛で日本が盾であるとの役割分担があったが、今回、OKを出した背景には、トランプ政権になって同盟国に一定の役割を分担させようとしたことと、「バイアメリカン」と言って日本に多額の米国製武器を購入させていく点がある。
3点目は声を大にして言いたいが、公明党の変節がある。公明党はかつて2004年、中期防衛力整備計画に長射程誘導ミサイルの研究を盛り込むのをやめさせた。それが今回は研究費のみならず購入費にまでOKを出した。その理由について、2017年12月22日の毎日新聞に経緯が書かれている。防衛省に対して公明党は最初、「うちは『島しょ防衛のため』という説明ではもたない」と消極姿勢を示したと。そのため防衛省は、今度は「日本海にいるイージス艦を北朝鮮の脅威から守るため」に遠い距離から戦闘機で敵の艦船をミサイルで攻撃するという屁理屈をひねり出し、公明党がそれにゴーサインを出したと。茶番劇であり、公明党の責任は非常に大きい。

憲法9条2項の無効化へ

では、敵基地攻撃兵器の導入は何をもたらすか。紹介したい言葉がある。2014年5月15日の朝日新聞に掲載された木下昌彦・神戸大准教授による寄稿だ。「攻撃的兵器不保持の原則が維持できない場合、戦力統制という9条2項のもつ意義は消失し、際限のない軍拡が可能となる」と。これに端的に表されていると思う。今、自民党内で改憲にあたって9条2項に手をつけるかつけないかの議論があるが、今まで9条2項はしぶとく力を発揮してきた。青井さんの話にもあったように、9条2項が自衛隊の実力、「戦力」をコントロールする機能を果たしてきた。
敵基地攻撃兵器の導入は、9条2項の持ってきた力を事実上捨て去る、奪い取るという意味がある。だから、「先取り壊憲」「実質的改憲」と言っている。憲法9条の改悪に等しいものだと私たちはきちんととらえるべきだと思う。明文改憲の発議に反対するのは当然だが、だからと言って、今進んでいる、予算が計上されているこの事態に対して、市民からの反対の声が弱いというのは、よはり良くないと思っている。
木下さんが述べる通り、既に、自衛隊のヘリ空母を改修し本格的な空母にして、F35Bという垂直離発着できる攻撃的な戦闘機を搭載するとか、敵基地を攻撃するために相手のレーダーを潰せる電子攻撃機を導入するなどの検討が始まりつつある。軍事力というのは通常、能力かける意志だと言われるが、歴代政権は意志を縛るのが困難だからこそ、攻撃型の武器は持たないと能力を縛ってきた。今回、能力の縛りを外してしまった。意志を縛るのは難しい。実際に小野寺防衛相は、宮本徹議員の「将来にわたって敵基地攻撃に絶対に使わないか」との質問に、「私の責任で言える立場は、政府の現在の考え方だ」としか言えない。政権が替わればどうなるかわからないと。

能力の縛りを解いてはならない

私は能力を認めることには絶対反対だが、百歩譲って能力を持ったとしたら、意志を100%縛りきらなければいけない。例えば、PKO法の時に「PKO5原則」というものを作った。実質的には破られているが、まだある程度はコントロールする力を失ってはいない。少なくともそれに匹敵するぐらいの、「敵基地攻撃はしない原則」を作らせるべきではないか。あるいは全会一致の国会決議で縛るとか、それくらいさせなければ、どこまでも行ってしまうと思う。
それ以外にも、敵基地攻撃兵器の導入は、南西諸島で進む自衛隊の増強にも連動していく。空母を持ち、搭載するF35B戦闘機を南西諸島の基地や空港に展開させていく。当然、日米共同の軍事作戦態勢も強化されていく。副作用も次々と広がっていく。
ここで踏みとどまって、予算は衆議院を通過したので30日ルールにより成立してしまうだろうが、実際の配備までは4、5年かかると言われている。その間に世論を高めていく。明文改憲の発議もさせない、万が一国民投票になっても断固として否決して、武器輸出も封じ込め、集団的自衛権の解釈変更もやめさせ、安保法制は廃止させ、敵基地攻撃兵器の導入経費もいっさい付けないところまで持っていく。立憲野党の結束と市民との共闘でそこまで行かなければいけない。そのためにも今の段階で、予算の計上に対する「NO!」の声をはっきりとあげていくことが大事だと思う。

軍縮計画の大綱を

今の政府のやり方は、明文改憲の発議に向けて動きながら、解釈改憲をぎりぎりまでやってしまう。しかも、予算に計上することで既成事実化して、年末までに作る新しい防衛計画の大綱と、それに基づく武器の購入計画である中期防衛力整備計画と、改定する国家安全保障戦略に、後付けで敵基地攻撃能力の保有を入れようとしている。非常に汚いやり方だ。
では私たちはどうするか。予算に対してもしっかりと反対したうえで、安倍政権がやろうとしている防衛戦略、安全保障戦略とは異なる、憲法9条の理念に即した、むしろ戦争を予防していくようなビジョンを作ることだ。単に日本が守られればいいではなく、世界の武器取引をやめさせたり、難民の救援をしっかりするとか、紛争の仲介に乗り出すとか、青井さんが言われたような憲法9条に基づく骨太の軍縮ビジョンやロードマップを市民と野党が一緒に勉強し討論して、1年くらいかけて作っていってはどうか。
その時に大事だと思う点を述べたい。日本だけが「非核三原則」とか「専守防衛」とか言っても、周りの国からは信頼されてこなかったと思う。なぜかと言えば、ものすごく圧倒的な戦力を持つ在日米軍がいるからだ。横須賀基地の米イージス艦だけで1隻に100発、それが11隻と、合わせて1000発を超えるようなトマホーク巡航ミサイルを装備している。さらに、いざとなれば日本はアメリカの核兵器で他国を攻撃してくださいと言っている。本当に欺瞞的な平和主義しかとってこなかった。 それを乗り越えるような、本当に説得力のある、東アジアの軍縮を可能とするような平和主義を作るためには、日米安保条約や日米地位協定、あるいは在日米軍の存在に手をつけないことはあり得ない。沖縄の新基地建設も当然やめさせ、地位協定も抜本的に変えさせ、日米安保や在日米軍を縮小していくというプランとセットで軍縮のビジョンを作ることが肝だと思う。ぜひ、野党の議員の方々とも連携して、市民も勉強し集会もやっていく。今日の集会がその一つのきっかけになればいいと思う。

【報告1】:「専守防衛」を投げ捨て、歯止めなき軍拡に道ひらく 敵基地攻撃兵器の導入に反対する緊急院内集会

3月6日に衆議院議員会館において、「専守防衛」を投げ捨て、歯止めなき軍拡に道ひらく 敵基地攻撃兵器の導入に反対する緊急院内集会を主催しました。講演録を2回にわたりお届けします。

青井未帆さん(学習院大学大学院法務研究科教授)

IMAG14909条というプロジェクト

憲法論との関わりから話したい。どうも危機感があまりないんじゃないか、なにか静かじゃないか、これくらい仕方ないという雰囲気に押されているような気がする。しかし、これは2014年に集団的自衛権の行使を容認したことの一つの重大な帰結であり、形であると思う。こういうことが積み重なっていくうちに、戻れないところまできてしまうのだと思う。集団的自衛権行使はいけないと言い続けるためには、既成事実の積み上げを許してはいけない。
安保法制に基づく防衛出動命令は憲法9条などに反することを前提に、現役陸上自衛官の男性が国を相手に命令に従う義務がないことの確認を求めた裁判で、東京高裁が原告に訴えの利益がないとして却下した地裁判決を取り消し、審理を東京地裁に差し戻した。訴えの利益があるとされている。2014年から2015年に行われたことはまだグレーである。「あれが白ではない」と言い続けるには、こういうところから守っていかないといけない。
2014年に集団的自衛権の行使が容認されたので、憲法に書いてあるからダメという議論は残念ながらあまり有効ではない。このことも正面から受け止める必要がある。「私たちがコミットする平和主義に合致しないからいけない」と言うべきだ。9条の条文があるから平和だったのでは全くなく、9条があり、それに基づく複数の解釈と政策があり、武器輸出三原則のような憲法にも法律にも書いてないが大切なものがあった。だから、おかしいじゃないかと、9条がある中でこうした武器の輸入はおかしいじゃないか、軍需産業について「死の商人」のレッテルを嫌がる空気を私たちが作ってきた。9条を取り囲む形で一つの大きなプロジェクトを私たちは作ってきた。9条とともに、平和に対してコミットする思い、別の言い方をすると高いモラリティが合わさらないと作ってこれなかった。

「平和国家」の変質へ

9条のプロジェクトを支えているものは「論理」と「価値」の側面に分けられるが、前者は2014年以降、傷ついてしまっている。だからこそ、後者の価値の側面の重みと役割が大きくなっている。憲法論にできることは少ないかもしれないが、平和主義を高く掲げる憲法のもとで、憲法の実現として作ってきた文化の重要性を指摘したい。
論理の側面にヒビが入ってきたことをもう少し補足したい。「空母は持てない」とか「攻撃的兵器は持てない」と今も言ってはいる。その前提は、できるのは自国の防衛であり、他国に侵略するとか、他の国のために軍事力を用いることはないということだが、2014年4月の「安保法制懇」報告書には、「世界のどこで起こっても我が国の存立に関わる」との認識を示している。2015年の安保法制国会で「状況が変わったので他国を守ることが我が国を守ることになる」という説明を横畠内閣法制局長官がしており、安倍首相も同じように言っている。
「敵基地攻撃兵器を持てない」というのは、新しい政府見解では自衛の名のもとに「持てる」と説明できるはずだ。今は言葉を濁しているが、ロジックとしては説明可能なところに来てしまっている。敵基地攻撃能力や空母を持つのは、私たちの「平和国家」として、あるべき姿なのか。問題をきちんと明らかにすべきだ。他の国と違う「平和国家」だったのではないか。そこまでやっていいなら、他の国と違う「平和国家」である側面は薄くなる。それでは9条2項のある意味はなくなってしまう。9条のもとでの「平和国家」が論理の面で揺らいでいるからこそ、価値の面で押さえるべきものを押さえないと、既成事実の積み上げですっかり平和国家でない国家になってしまう。
国内のみならず他国にどう思われるかの視点も考えるべきだ。朝鮮半島情勢は大きく見れば対話の動きが強まっているが、「断固対話はお断りする」と発信して、同時に空母の保有を検討したり、長距離巡航ミサイルの予算を計上するのは他の国からどう思われるか。「平和国家」という言葉は他の国から白々しいと思われるのではないか。そこまで含めて、私たちは自画像を変えようとしている。そのことの重さも付言しておきたい。

実力統制の失敗の教訓

次に、私たちはこの問題をどう理解してきたか、平和国家70年というよりもっと長いスパンで考えておきたい。一つ抜けている視点は、実力に関する議論。実力をどう統制するかは明治の開国以来のものすごく重いとても大きな課題だ。それをすごく小さく、「1ミリも変わりません」と矮小化しており、時間的広がりが欠けている。
私たちは明治憲法体制下で軍隊をきちんとコントロールできなかった。しばしば言われる「軍部の独走」。軍隊のコントロールに失敗した遠くない過去がある。考えてみると、天皇制は軍事力に支えられてきたわけではない。数百年というスパンで見るならば、明治維新でも天皇は軍事力で権力を握ったのではなかった。天皇は兵力は持っておらず、薩摩や長州、土佐が持っていた。だから、実力を吸い上げて国軍を作らなければならなかった。農民を徴兵すると下からの民主化が軍隊に入ってきてしまい、民主的軍隊になると困るということで、統帥権を独立させ、参謀本部を設置し、軍人訓戒や軍人勅諭を作り、政治から軍事を独立させてなんとかコントロールしようとした。
しかし、軍部の独走になってしまった。一番悪かったのは統帥権の独立であり、軍部大臣現役武官制であると私たちは一般常識のように知っているが、元々はこれらは政治から引き離したものにするために用いられたものだった。明治憲法より前に存在した実力が議会制民主主義や内閣といった政党政治の及ぶところではなくなってしまい、天皇も、誰もコントロールできなくないものを内に抱え込むことになってしまった。その結果、近代日本の破滅に等しい終わり方を導いてしまった。
だからこそ、憲法9条は明治憲法下であった軍隊に関わる制度をなくした。それは軍事に関する統制に失敗したからだ。明治憲法下の兵役義務、統帥権、軍令、参謀本部・軍令部、軍部大臣現役武官制、戒厳制度、非常大権、編制大権、軍人特例など、軍に関わるたくさんのものをなくしたのが9条だ。敵基地攻撃能力とか長距離巡航ミサイルを持つというのは、まさにそういう話だ。国家の実力としてどこまで持てるのか、どうコントロールするのか、任せていいのか、こういう問題を憲法の中に入れようという空気が強まる中で、問題の大きさを認識すべきだ。

国際法の到達点と9条

9条には国際法の到達地点の編入という側面もある。日本では非常に内向きの議論がなされているが、安全保障の話は国際政治の中でしか起こらない。国内の法秩序に留まってはいない。ここで武力行使の原則違法化というルールをもう一度確認したい。
1928年の不戦条約で戦争を初めて違法化した。でもその後に「戦争」と呼ばない形での武力紛争を止めることができず、我が国もその主体となった。国連憲章は「戦争」という言葉を使っていない。武力行使を原則として違法としている。9条のように完全に武力行使を否定するのではなく、集団安全保障や個別的・集団的自衛権は例外としながらも、原則は戦争を違法とした。9条はこの原則をさらに一歩進めるかたちで国内法秩序に取り込んだ。私たちは憲法9条のもとに軍事ないしは実力を統制してきた。国がとり得る安全保障政策にかなり強い限界を課してきたのが9条だ。それは国際法のスタンダードにも合致するものだったと思う。
憲法9条は1項で、jus ad bellumの話として戦争を放棄しているため、jus in bello(戦時国際法)など必要ないというのが9条の解釈として素直だろう。しかし、政府は武力行使は例外的にし得る場合があると言っているので、実際にはjus in belloの問題が生じている。これは理論的にはかなり説明困難というべきだ。とはいえ、国際法のスタンダードを超えず、国連憲章の体制を破壊することのない限りにおいては、許される範囲だったのだと思う。問題は、国際法のスタンダードを手前勝手な理由で超えたり、国際法のルールを踏みにじってはいけないということだ。
「自衛のため」や「満蒙は日本の生命線」というような、手前勝手な理由で抜け道を作ってはいけない。2014年まではぎりぎり国際法のスタンダードを超えることなく、綱渡りのように動かしてきたと説明することも可能だったろう。しかし、今、国連憲章の想定する平和の維持の方法を無視するかのような発言が相次ぎ、法制度が説明されている。国際法のスタンダードを崩すことに他ならないのではないか。国際法は武力行使は違法としていて、勝手に自衛戦争するのは禁じている。できるのは自衛のための措置で、適法かどうかを決めるのは国際法だ。
理論的に説明の困難な政府解釈はそれ単体では説得力がないが、集団的自衛権を行使できない、敵基地攻撃能力を持てない、攻撃型空母は持てないなどの諸政策が、支えてきたものといえる。他の国から攻められたときに自国の防衛を自衛の措置としてしかしない。それを担保するものがないと他の国は信用しない。単に9条があるだけでなく、「本当にしません」という国家の意志を政策として示さないと他の国にシグナルを送ることにはならない。2014年までは「憲法9条のプロジェクト」の中で、日本は「専守防衛」であると、他国防衛はしないと担保してきた。
自衛隊の評価についてはいろいろとあるが、かつての自衛権発動の3要件のもとで、我が国に対する急迫不正の侵害に際して、他に排除するための適当な手段がないときに、かつ自国領域でのみ必要最小限度の武力行使をする限りにおいて、国際法上、他の国ができることより低い自衛の措置として、違法性を阻却できる余地はあったのではないか。9条が実力の統制に成功してきたと評価できるとしたら、それは9条という条文だけの話ではない。9条全体がプロジェクトとして、論理と価値をつなぎ合わせて作り上げられてきたものだった。

今こそ骨太の議論を

何が起こっているのか。明らかに論理的に破たんした。やってはいけないことをやってしまった。2015年の安保法制国会で示されたのは、「自衛のため」という言葉をすっかり変えてしまったこと。自分たちが「生命線」「存立の危機」だと思うことは何でも入ってしまう危険性ができてしまった。恣意的になされないことを担保する仕組みは設けられなかった。私たちがしてこなかった新たな解釈が取られるようになり、論理の部分では大きく傷ついてしまった。
さらに価値の変質も今進行している。危機感がないというのは、価値に関する話だ。ただ何となくという側面の方が強いのかもしれない。報道や政府の説明は十分に国民に情報を与えていない。国会に改ざんされた文書が提出され、虚偽の答弁がなされるというとんでもない事態が起こっている。議会制民主主義の土台に関わる深刻な事態だ。そういう事態について、まだ十分な情報を国民が得ていない。
よく考えたうえでかつての平和国家をやめようというのではないようだ。熟慮の結果ではない。でもじわりじわりと進んでくるのが価値の変質だ。9条のプロジェクトを支える価値がなくなったらどうなるのか。ある意味で壊すのは簡単だ。考えてみれば、今しかどういう国にしたいかの骨太の議論をする時間はないのではないか。変わってしまったら同じ国を作り上げるのは難しい。
政治状況は非常に流動的だが、3月の自民党大会で改憲の条文案が出るとの話もあり、国会発議も既定路線のように語られている。いよいよもって骨太の議論をするひまはなくなるのかもしれない。戦争は許さない、国のために殺さないし殺されないというところから出発したのに、「人を殺すのも仕方ないよね」となってしまっていいのか。日本にしかできないことがまだまだあるはずだ。
「クリーンハンドで臨める」というのは、かつて外務省が言っていた言葉だ。日本が国際紛争に武力で介入しないと外務省が誇りにしていた時期もある。まだ残っている財産があるうちに、どういう国にしたいのか、まだ選べる選択肢がたくさんあるうちに議論すべきだ。敵基地攻撃兵器や空母の導入は、それを足元から崩してしまう。骨太の議論をできなくするための既成事実の積み上げであり、こういう動きを止めないと、議論することなく別の国に変わってしまう。

【報告2】亡国の武器輸出~日本版「軍産学複合体」の今 NAJAT 11.15集会

昨年11月15日に開催した「亡国の武器輸出~日本版「軍産学複合体」の今」、学習院大学大学院法務研究科教授、青井未帆さん(憲法学)と軍学共同反対連絡会共同代表の池内了さんにご講演いただきました。

池内さんの講演「軍学共同の現状と反対運動の課題」を紹介します。
(青井さんの講演内容はこちら

軍学共同とは:科学の軍事化

「軍学共同」とは「軍」である防衛省(自衛隊)と「学」である大学・研究機関とが共同して武器開発等を行うこと。「共同」という言葉を使うといかにも対等な関係のように見えるが、軍つまり防衛装備庁が金を出して、学に研究をやらせるということなので、学を下請けにすると言って過言ではない。これがまさしく今の武器輸出の大きな背景にある。つまり、新たな武器を考案していくことによって、武器輸出を一気に加速させることが考えられる。
現在行われている具体的な軍学共同の事業は、防衛省の技術研究本部、これは防衛装備庁に吸収されたが、それが大学や研究機関との間で「技術交流」を行ってきた。現在、23件にもわたって、防衛装備庁にある5つの研究所と大学・研究機関との間で、協定を結んで技術の情報交換をしている。技術というのは防衛技術、つまり軍事技術。23件にもなり、今後さらに問題にしなければならないが、現状では予算のやり取りはなさそうなので、今のところは注視していくことにしている。
もう一つは、防衛装備庁が行っている「安全保障技術研究推進制度」というもの。まさしく防衛装備庁がお金を出して、大学・研究機関の研究者を軍事研究に動員する制度である。

戦後、「学」は「軍」と一線を画した

前提として言っておかなければいけないのは、日本の学術界は軍と一線を画してきたということ。1949年に日本学術会議が発足したときの決議で、「科学は文化国家ないしは平和国家の基礎である」と明確に打ち出して、その明くる年の1950年の第6回総会で「戦争を目的とする科学の研究には、今後絶対に従わないというわれわれの固い決意を表明する」という決議をあげた。
1967年にも同様の決議をあげている。特に1950年の場合は、今言われた日本国憲法の平和主義の原則をわれわれ学術の世界の人間も守るべきである、その線で研究・教育も行うべきであるということを明確に打ち出した。1967年はもう少し違う状況もあったが、再び「戦争を目的とする科学の研究はこれを絶対に行なわないという決意を表明する」と二度までにわたって決意表明をしている。
この二つの声明・決議は私たち大学にいる研究者は当然にように受け入れ、当たり前になってきていた。私たちの心に刷り込まれてきたと言ってもいい。その状況がこの数年で転換させられつつある。

「軍学共同」の動き

軍学共同の動きが具体化したのは、2013年12月の閣議決定である。そこには「大学・研究機関との連携を強め、防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の活用に努める」と書かれている。この閣議決定では基本的に安全保障に関わる3つの重要な決定がなされていて、どれにも「デュアルユース」という言葉がある。民生技術つまり大学や研究機関で開発されている技術を軍事に転用する、活用するということ。
これを受けて、様々な動きが一斉に出てきた。防衛装備移転三原則は明くる年に策定され、武器の生産や輸出を常態化する、推し進めていく国家になった。2015年には新宇宙基本計画が出されて、翌2016年には改定され、宇宙の軍事化を進展させることが具体的に出された。例えば、「情報収集衛星」、これはスパイ衛星のことだが、10機体制にする。今まで1兆円ほど使って10機を打ち上げてきた。現実に動いているのは5機だが、常に10機体制で地球全体を監視するということが宇宙基本計画に書かれている。
あるいは準天頂衛星を7機体制にする。「みちびき」というGPS衛星が今年で4機打ち上げられた。車のGPSに便利だという宣伝ばかり流されているが、基本的には軍事利用して、アメリカのGPSを補完するのが大目的。これらが軍と公的研究機関である宇宙航空研究開発機構(JAXA)との間の軍学共同の具体的な表れである。

安全保障技術研究推進制度

そして、2015年に防衛装備庁が「安全保障技術研究推進制度」という長い名前の制度を作り上げた。これは、将来の防衛装備品の開発のための芽出し研究である、要するに種をまいて芽を出すくらいまではやると言う。そこで「基礎研究」、あるいは「基礎技術」ということをやたらに強調している。その中で、有望な課題・研究について防衛省が引き取って、開発し、活用する。つまり、防衛省が装備品として具体的に展開する。だから、最初のアイデアが欲しいというわけだ。
ここで「基礎研究」という言葉がよく使われるので、研究者たちが「基礎研究であれば自由な発想のもとで行われるのではないか」とつい思ってしまう。しかし、官庁用語では基礎研究というのは、「戦略的・要請的な基礎研究」とされ、自由な発想に基づく外部からタガがはめられない研究は「学術研究」と呼んでいる。この「戦略的・要請的」というのは、日本のイノベーションをするための戦略的な方向、あるいはそのイノベーションの要請に合うような研究を基礎研究と呼んでいるのだ。
つまりこの制度では、防衛の装備開発を要請する、あるいは装備を戦略的につくっていくための基礎であるというものである。基礎研究の後に防衛装備庁が取り上げて装備化する流れがあることを押さえておく必要がある。つまりこれも軍事研究の一つだ。2015年度から競争的資金を発足させて公募して、各大学、研究機関、企業が応募して、ものになりそうだと見なされると採択される。具体的には防衛装備庁がテーマを出しているが、ちょっと考えれば装備品としてどう使われるかわかるものを掲げている。

予算の推移

1件について1年で3000万円が3カ年に渡って使える。2015年度に3億円の予算で発足し、2016年度は6億円に倍増し、2017年度には110億円と巨大な予算に膨れ上がった。要するに防衛装備庁は、軍事研究の重要性を位置づけて大きな予算を付けている。自民党の国防部会が後ろからプッシュしている事情もある。
2015年度は応募が109件で、大学が58件もあった。私たちはこれに非常にびっくりした。しかし、2016年度はこれが半分以下になった。大学からは23件に。なぜ半分以下になったのか。これは後の教訓として知っておく必要がある。
私たちの運動は2014年からなので、運動の効果がじわじわと広がってきたのかな・・・と。うぬぼれがあるのでそこは割り引いてもらえばと思うが。戦争法という法律に反対する運動が国民的な広がりを持った。やはりあの状況の中で軍事研究におめおめと手を出すことはできないという雰囲気になった。
もう一つは私たちの仲間たちが特に地方で抗議運動をしたときに、地方紙とか地方版が報道してくれて、市民に伝わった。地方に住む人たちは地元の大学に誇りを持っている。その大学が軍事のための研究をやるのか、ということで様々な抗議が大学に伝わる。大学はそれを一番恐れた。特に私立大学は受験生が減ることを非常に恐れた。
つまり、ここで得た教訓は、市民が見ていることを知ると研究者は躊躇して応募しないということ。あるいは、社会的に反戦的雰囲気が非常に強いと応募しないということ。社会の情勢や市民の明らかな気持ちがきちんと伝わると、それでもやろうかというのはなかなか少ない。
2017年度は110億円に増やされて応募件数は104件と初年度並みになった。しかし、注目すべきなのは大学が22件に留まり、2016年度の23件からむしろ減った。日本学術会議の新声明が出たことの影響がある。様々な運動が広がって大学自身が大きく躊躇したのである。

軍産連携から「軍産学複合体」へ

しかし、これと全く対照的なのは企業の動きだ。企業はなんと55件に増え、全体の応募件数の半分以上を占めるようになった。つまり、武器輸出を前提とした企業の軍事開発に大きな力点が入るようになった。
2017年度には3000万円のもの以外にタイプSという5年間継続可能で最大20億円という大規模研究が設定された。このS型は6件も採用された。110億円中、10億円は3000万円クラスのA、B型だが、100億円はS型の大規模研究に分類されている。
大規模研究では企業は12件応募して4件採用された。企業が力点を置いてきて、防衛装備庁も企業に具体的に資金を振り向けようとしている。今まで採用されたのは、パナソニック、NEC、富士通、三菱重工、IHI、日立、東芝などいわゆる一流の大企業がずらりと入っている。こうした大企業が軍装備の開発研究に乗り出している。
私たちはこれを「軍産学複合体」への出発点と考えている。企業は武器生産、武器輸出を企業目的にしつつある。企業の表の顔と裏の顔だ。パナソニックなどの大手企業はテレビコマーシャルなどでいかにも日本の明るい未来を背負うなどと言いながら、裏の顔では死の商人になる道を一歩、二歩踏み出しつつある。
もう一点は産を軸にした軍と学の結びつきということが進みつつある。大学からの応募はまだ22大学もあるので安心できないが、一定程度の歯止めがかかっている状態だ。そうすると、防衛装備庁としてはまず軍と産を結びつける。これで産業界からの大口の応募を採用する。それともう一つは「産学共同」というのは今大学ではずっと進んでいる。軍からの金を産が受け取り、産からの金を大学に流す。そういう流れの中で「軍産学複合体」を形成していくという形がとられているのではないか。
もう一点、公的研究機関と呼ばれる研究開発法人、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、物質・材料機構、情報通信機構、JAMSTEC(海洋研究開発機構)、理研などが国策機関になっていくという危険性もある。大学は歯止めがかかったが、公的研究機関からの応募は増えているからだ。

日本学術会議の50年ぶりの「軍事的安全保障研究に関する声明」

これらに対して、日本学術会議による50年ぶりの「軍事的安全保障研究に関する声明」が出た。「軍事的安全保障研究」とは軍事研究のこと。声明は50年、67年の声明を「継承」する、声明に込められた精神を受け継いでいくと冒頭に述べている。
それ以外に注意点として資金源はどこかを明確にする必要があると。それはどのような目的のための資金であるか、そして、公開性がきちんと担保されているか、これらのことを十分に注意して、押さえたうえで考えなければならないと。政府が研究に介入してくる恐れは十分あるよということを明確に主張して、こういう研究に携わらないようにと暗に述べている。

大学の態度

いろいろな大学で、行動規範や研究倫理、学長声明、理事会声明などが出され、現在、30大学以上が少なくとも今年度は応募しないことを宣言し、声明を出している。しかし、日本学術会議が明確に打ち出しているように、ちゃんとした倫理規範とか行動規範などの形で文章化することが非常に大事だ。
というのは、学長声明や理事会声明は学長などが変わるとコロッと、100%意見が変わる可能性だってあるからだ。今、国立大学では理事は全部学長の意向で決まる。学長の判断、リーダーシップで決まることが多い。だから、私たち自身は今後、十分学長の言動に注意したうえで大学に働きかける必要があると思う。

反対運動の課題

最後に、反対運動の課題を述べたい。はじめに、大学における軍事研究差し止めの要請を強めること。研究倫理綱領や行動規範などの規定制定の要請や、審査機関の設置・議論の公開の要請を行う。
そして、公的研究機関に対する働きかけ。これは非常に大変なのだが、考えているのは労働組合との結びつきを強めること。国交労連は3年にわたり大学に対して軍事研究に対してどうなのかというアンケートをとって、常にフォローしているので、連携していきたい。
日本学術会議の会長が10月から大西隆さんから山極寿一さんに代わった。山極さんは軍事研究に反対する姿勢で臨んでおられる。そして、日本学術会議にこの問題についての常設委員会を持つことも表明されている。私たちがこの委員会に対して意見を述べるとかフォーラムを開催させるなどして、日本学術会議が筋道を貫徹するための活動をしていく。
もう一つは市民との共同行動だ。やはり市民の意向や考え方は大学に敏感に反映するので、軍事研究に積極的な大学や研究機関には抗議活動を行う。それは当然ながら、このNAJATとも共同しつつ、武器開発は武器輸出につながるのだということを明確に打ち出していく。また、日本平和学会などと討論会などを共催していく。
以上、様々なことを予定しているが、とりあえず私たち自身が軍学共同反対連絡会を強化しながら、幅広く訴えていきたい。ここに集まられた皆さんともいろいろなところで共闘しながら、ともに戦いを進めていきたい、軍学共同反対の動きを強めていきたいと思う。