【報告2】「専守防衛」を投げ捨て、歯止めなき軍拡に道ひらく 敵基地攻撃兵器の導入に反対する緊急院内集会

3月6日に衆議院議員会館において、「専守防衛」を投げ捨て、歯止めなき軍拡に道ひらく 敵基地攻撃兵器の導入に反対する緊急院内集会を主催しました。(青井さんの講演録はこちら

 

杉原浩司(NAJAT代表)

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「先取り壊憲」としての「敵基地攻撃兵器」導入

今回の敵基地攻撃兵器の導入は、「安保法制」に匹敵するぐらいの既成事実になると思う。今日の集会も本当は予算審議が衆議院の段階でセットすべきだったが、遅くなってしまった。私たちの取り組みもまだ弱いが、憲法学や平和学などの方々にもっと声をあげてほしい。
今回の動きは憲法9条の改悪を先取りしていくものだ。安保法制もそうだし、武器輸出解禁もそうだったが、それらに次ぐ最終的な憲法9条の骨抜きだと思う。今回、予算を見ると8月末の概算要求の段階で研究費が付き、これだけでも問題だったが、年末になって突然、小野寺防衛大臣がアメリカとノルウェーの3種類の長射程巡航ミサイルの購入費を計上した。しかも、その中のJASSM-ERというロッキード・マーチン製のミサイルは、F15戦闘機を大幅に改修しないと搭載できない。すごく予算もかかる。こういうズサンな状態で予算を付けており、拙速な導入だ。
なぜこうした導入が可能となったのか、3点をあげたい。1点目は私たち主権者と立憲野党が舐められていることだ。小野寺さんは大臣になる前に『航空情報』という雑誌のインタビューでこう言っていた。「自分は他の政治家が言わない中、メディアで『敵基地反撃能力を持つべきだ』と勇気をもって発言したが、それに対する反対の声はほとんど届いていない」と。しかも、産経新聞の世論調査では敵基地反撃能力に賛成する声が多かったと。彼はそれによって自信を深めた。しかも、かつて自民党の検討チームの座長をやって、イージス・アショアと敵基地反撃能力の保有を提言した張本人だ。自分が提言した内容を大臣になって実践している。許せないのは、「敵基地攻撃兵器ではありません」とか「専守防衛には反しません」と平気で言っている。誰が見たってそんなのはウソだ。そういうデタラメをまかり通らせているのは、私たちの側の追及の甘さだと思う。
2点目は、今までアメリカは日本が敵基地攻撃兵器を持つことには非常に慎重だった。アメリカが矛で日本が盾であるとの役割分担があったが、今回、OKを出した背景には、トランプ政権になって同盟国に一定の役割を分担させようとしたことと、「バイアメリカン」と言って日本に多額の米国製武器を購入させていく点がある。
3点目は声を大にして言いたいが、公明党の変節がある。公明党はかつて2004年、中期防衛力整備計画に長射程誘導ミサイルの研究を盛り込むのをやめさせた。それが今回は研究費のみならず購入費にまでOKを出した。その理由について、2017年12月22日の毎日新聞に経緯が書かれている。防衛省に対して公明党は最初、「うちは『島しょ防衛のため』という説明ではもたない」と消極姿勢を示したと。そのため防衛省は、今度は「日本海にいるイージス艦を北朝鮮の脅威から守るため」に遠い距離から戦闘機で敵の艦船をミサイルで攻撃するという屁理屈をひねり出し、公明党がそれにゴーサインを出したと。茶番劇であり、公明党の責任は非常に大きい。

憲法9条2項の無効化へ

では、敵基地攻撃兵器の導入は何をもたらすか。紹介したい言葉がある。2014年5月15日の朝日新聞に掲載された木下昌彦・神戸大准教授による寄稿だ。「攻撃的兵器不保持の原則が維持できない場合、戦力統制という9条2項のもつ意義は消失し、際限のない軍拡が可能となる」と。これに端的に表されていると思う。今、自民党内で改憲にあたって9条2項に手をつけるかつけないかの議論があるが、今まで9条2項はしぶとく力を発揮してきた。青井さんの話にもあったように、9条2項が自衛隊の実力、「戦力」をコントロールする機能を果たしてきた。
敵基地攻撃兵器の導入は、9条2項の持ってきた力を事実上捨て去る、奪い取るという意味がある。だから、「先取り壊憲」「実質的改憲」と言っている。憲法9条の改悪に等しいものだと私たちはきちんととらえるべきだと思う。明文改憲の発議に反対するのは当然だが、だからと言って、今進んでいる、予算が計上されているこの事態に対して、市民からの反対の声が弱いというのは、よはり良くないと思っている。
木下さんが述べる通り、既に、自衛隊のヘリ空母を改修し本格的な空母にして、F35Bという垂直離発着できる攻撃的な戦闘機を搭載するとか、敵基地を攻撃するために相手のレーダーを潰せる電子攻撃機を導入するなどの検討が始まりつつある。軍事力というのは通常、能力かける意志だと言われるが、歴代政権は意志を縛るのが困難だからこそ、攻撃型の武器は持たないと能力を縛ってきた。今回、能力の縛りを外してしまった。意志を縛るのは難しい。実際に小野寺防衛相は、宮本徹議員の「将来にわたって敵基地攻撃に絶対に使わないか」との質問に、「私の責任で言える立場は、政府の現在の考え方だ」としか言えない。政権が替わればどうなるかわからないと。

能力の縛りを解いてはならない

私は能力を認めることには絶対反対だが、百歩譲って能力を持ったとしたら、意志を100%縛りきらなければいけない。例えば、PKO法の時に「PKO5原則」というものを作った。実質的には破られているが、まだある程度はコントロールする力を失ってはいない。少なくともそれに匹敵するぐらいの、「敵基地攻撃はしない原則」を作らせるべきではないか。あるいは全会一致の国会決議で縛るとか、それくらいさせなければ、どこまでも行ってしまうと思う。
それ以外にも、敵基地攻撃兵器の導入は、南西諸島で進む自衛隊の増強にも連動していく。空母を持ち、搭載するF35B戦闘機を南西諸島の基地や空港に展開させていく。当然、日米共同の軍事作戦態勢も強化されていく。副作用も次々と広がっていく。
ここで踏みとどまって、予算は衆議院を通過したので30日ルールにより成立してしまうだろうが、実際の配備までは4、5年かかると言われている。その間に世論を高めていく。明文改憲の発議もさせない、万が一国民投票になっても断固として否決して、武器輸出も封じ込め、集団的自衛権の解釈変更もやめさせ、安保法制は廃止させ、敵基地攻撃兵器の導入経費もいっさい付けないところまで持っていく。立憲野党の結束と市民との共闘でそこまで行かなければいけない。そのためにも今の段階で、予算の計上に対する「NO!」の声をはっきりとあげていくことが大事だと思う。

軍縮計画の大綱を

今の政府のやり方は、明文改憲の発議に向けて動きながら、解釈改憲をぎりぎりまでやってしまう。しかも、予算に計上することで既成事実化して、年末までに作る新しい防衛計画の大綱と、それに基づく武器の購入計画である中期防衛力整備計画と、改定する国家安全保障戦略に、後付けで敵基地攻撃能力の保有を入れようとしている。非常に汚いやり方だ。
では私たちはどうするか。予算に対してもしっかりと反対したうえで、安倍政権がやろうとしている防衛戦略、安全保障戦略とは異なる、憲法9条の理念に即した、むしろ戦争を予防していくようなビジョンを作ることだ。単に日本が守られればいいではなく、世界の武器取引をやめさせたり、難民の救援をしっかりするとか、紛争の仲介に乗り出すとか、青井さんが言われたような憲法9条に基づく骨太の軍縮ビジョンやロードマップを市民と野党が一緒に勉強し討論して、1年くらいかけて作っていってはどうか。
その時に大事だと思う点を述べたい。日本だけが「非核三原則」とか「専守防衛」とか言っても、周りの国からは信頼されてこなかったと思う。なぜかと言えば、ものすごく圧倒的な戦力を持つ在日米軍がいるからだ。横須賀基地の米イージス艦だけで1隻に100発、それが11隻と、合わせて1000発を超えるようなトマホーク巡航ミサイルを装備している。さらに、いざとなれば日本はアメリカの核兵器で他国を攻撃してくださいと言っている。本当に欺瞞的な平和主義しかとってこなかった。 それを乗り越えるような、本当に説得力のある、東アジアの軍縮を可能とするような平和主義を作るためには、日米安保条約や日米地位協定、あるいは在日米軍の存在に手をつけないことはあり得ない。沖縄の新基地建設も当然やめさせ、地位協定も抜本的に変えさせ、日米安保や在日米軍を縮小していくというプランとセットで軍縮のビジョンを作ることが肝だと思う。ぜひ、野党の議員の方々とも連携して、市民も勉強し集会もやっていく。今日の集会がその一つのきっかけになればいいと思う。

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