報告「三菱さん川重さん 死の商人にならないで! 神戸アクション」

4/22に神戸で、武器輸出反対のアクションがあり、NAJATからも代表杉原と戸山が参加しましたので報告します(PDFバージョンはこちら)。


 須磨の海に、金色の大きな満月がのぼっていた。朝の波はおだやかに浜に寄せ、また離れていき、瀬戸内の夜が明ける。夜行列車の窓から見えるのは、自衛隊の潜水艦隊が根拠地にする海だ。そして、神戸の大きな造船所では、毎年ごとに新しい潜水艦が、この海へと船台を滑って進水していく。
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 神戸の海岸部にある和田岬駅に着いたのは朝 10 時。改札口もない小さな駅で、乗り降りする人のほとんどは三菱重工の関係者だ。すでに現地のグループ「神戸ピース i ネット(以下 i ネット)」の人々15人ほどが集まっていて、それぞれ帽子やシャツなど、どこかに赤いものを身につけて、賑やかに行動を準備している。この周辺は三菱重工、三菱病院など、三菱関係の事業所だらけの地域だった。
 最初の打ち合わせで、「武器輸出反対ネットワーク(以下 NAJAT)」から、杉原浩司さんが挨拶をする。杉原さんは「オーストラリア側は日本の潜水艦を導入候補から外したという報道があり、安倍政権にとって、この失敗はとても手痛い。市民の側から〈原発、武器の輸出を諦めろ〉という声を強めるチャンスだと思います」と、今の状況について語った。
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 駅から数分のところにある三菱重工・神戸造船所に歩いて向かう。アポイントメントがあったので、すでに三菱重工の社員や守衛が10人ほど待ち構えており、隣り合う建物のスロープにも会社関係者たちが立ってこちらを観察していた。つまり遠巻きに、私たちは取り囲まれていた。三菱重工は「本社総務部神戸総務グループ」の田中さん、岡田さんの二名が対応し、i ネット側は事前に用意した要請文を読み上げたが、会社側は「要請文は受け取るが、内容には答えられない」の一点張りだった。私たちからは「ただ受け取るだけでなく、市民との意見交換の場を設けてほしい」と伝える。

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 要請文とは別に、参加している女性が社員たちに語りかけた。
「私は兵庫区在住で、町内会で工場を見学させてもらったこともありますし、身近な感じがしていたんですが、三菱さんには、やっぱり戦争につながるものは作ってほしくない。そういう地域住民の気持ちも汲んでもらいたいと思います」

i ネットは地元の人々を中心としているので、こういった話が出てくるところがおもしろい。
要請を終えて、参加者間でいろいろなおしゃべりや情報交換をしながら地下鉄に乗り、今度は川崎重工・神戸工場に向かう。約束はしていたが、総務関係者も来ておらず、結局守衛が受け取ることになった。言いたいことはいろいろあったが、ほとんど伝えられずに終わる。「三菱も感じはよくなかったが、最低限のことはしている感じ。川重はもっとひどい」という声も上がる。

 曲がりなりにも三菱は、グループ全体で言えば一般の消費者に近いところにいる。自動車、不動産、銀行、家電……一方で川崎重工は、バイクやジェットスキーぐらいしか一般向けの製品はないせいか、消費者への対策という意味では、よく言っても稚拙、悪く言えば高飛車すぎると感じる。

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 海岸沿いのレストランでランチをとってから、ハーバーランドで観光船に乗りこんで、40分ほどの港めぐりに出る。もちろん、狙いは川重と三菱の潜水艦工場を海から見ることだ。

 500 人乗りの観光船は、思った以上に工場の近くを航行した。
 「あれを見て下さい。ハーバーランドの大きな観覧車のすぐ向こうに黒い潜水艦が見えるでしょう。楽しい日常のすぐ隣に、戦争が隣接している。これが、神戸の象徴だと思うんです」
 高橋秀典さんは、こう指摘した。高橋さんが世話人を務めている、今日の主催団体の i ネットは、毎週、安保法制に関するシール投票などを行なっている。神戸では、同じように港町であるイスラエルのハイファ市とも姉妹都市協定を結ぶ動きもあり、高橋さんたちは関西のパレスチナ支援団体とも連携して、反対の意思表示をしていきたいという。

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 海から見ると、川崎重工のドックには「そうりゅう」型潜水艦が1隻収容され、岸壁には3隻の潜水艦が係留されていた。修理中なのか、新造艦の艤装をしているのかは、素人目にはよくわからない。
観光船のデッキでは、大阪から遠足に来た高校生たちが、「潜水艦だ、すごいすごい」と無邪気にはしゃいでいる。
 さらに船は港内を進んで、三菱重工・神戸造船所の近くを通る。ここでは2隻の潜水艦が係留され、修理を受けているようだった。海上自衛隊が保有する実戦用の潜水艦は17隻。そのうち6隻が神戸に停泊していることになる。まるで潜水艦基地だ。

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 NAJAT が作った横断幕を、ゲリラ的に船のデッキの側面に展開して、工場から見えるようにしようかという話も出たが、乗客が多くてやりにくい。その代わり、デッキの一角で、i ネット関係者が集まって記念撮影をすることにした。そのとき「潜水艦をオーストラリアに売るな!」と書いた横断幕を広げてみたら、高校生たちがいっせいに注目した。「えっ、日本が潜水艦をオーストラリアに売るの?それめっちゃ悪いやん!」と、自分から記念写真に収まって意思表示する生徒もいて、思いがけない交流ができた。

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 神戸では、小学生のときに誰でも一度はこうして「港めぐり」の船に乗るという。

「ああ、造船所には潜水艦があるんねんなと、子どもの頃から現状が刷り込まれているんです」と、主催者の一人、松本なみほさんは語った。潜水艦はいわば、神戸の地場産業のひとつ。神戸の三菱と川重の工場だけが、毎年一隻、自衛隊のために作り続けてきた。
 
 神戸というとおしゃれな街というイメージがあるが、これだけ施設が集中していると、いつか戦争が起きたとき、街ごと標的になる可能性も高い。そのことを、神戸の人々は意識しているだろうか。「ほとんどの市民は、まだ理解していないと思います。ですから、今日はアクションの第一歩です」

 引き続き、夕方からは三宮の神戸市勤労会館で、杉原さんが講師になって「日本を武器輸出大国にさせないために」と題した講演会が開かれた。朝から行動をともにしてきた人や、途中で一時離れて別の街頭署名に参加してきた人など含めて、40人ほどの市民が参加して、熱気のある講演会になった。

 杉原さんからは、世界の軍事費が4年ぶりに増加し、シリア空爆やサウジによるイエメン空爆によって武器貿易市場が活況を呈していることや、日本では 2004 年以来、ミサイル防衛に投じてきた税金は1兆5800 億円にものぼるのに、兵器としてはほとんど役に立たないことなど、NAJAT の活動を始めようと思った背景についての詳しい話が語られた。

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 「政府の解釈では、日本が武器輸出をしてはいけない紛争当事国は、世界のどこにも「存在しない」
そうです。これはおかしいですよね。シリアでは何十万人も死んでいるんです。かつての武器輸出三原則で書かれていたのは、「国際紛争を助長しない」ということでしたが、今の防衛装備移転三原則では、「国連憲章を順守する」ということに置き換えられています。こんなことは平和主義でもなんでもなくて、国連に加盟する時点で決まっている、当たり前のことです。武器輸出の制限として、何の意味もない原則になっています。実際には、国連安保理が禁輸対象国としている11カ国以外は、どこにでも輸出できる状態です」杉原さんはそんな状況を怒りをこめて報告した。参加者からも、軍需産業の労働組合のありかたや、アクションシートの使い方について、活発な質問が出された。

 オーストラリアは、4兆4千億円もの巨費を投じて、潜水艦隊を12隻に増強していこうとしている。これは一種類の兵器への支出としては、オーストラリア史上最大の予算だという。
 潜水艦は、通常動力の潜水艦であっても、使い方によっては原潜に匹敵するような攻撃兵器になりうる。前に、自衛隊で潜水艦長をしていた人の手記を読んだことがあるが、潜水艦探知が得意と言われる日本の海上自衛隊すら、水上艦艇から味方の潜水艦を探知することは極めて難しく、演習や実戦では、潜水艦の側が圧倒的に有利だという。

 どの国向けであれ、そんな潜水艦を輸出することは、海の軍事バランスにとって、必ず悪い影響を与えることだろう。安倍政権なら、それを「抑止力に貢献する」とでもいうのかも知れない。しかし、戦力の弱い国にとっては戦争をしにくくなるのなら、強い戦力・兵器を手にした側としては強気の外交交渉ができるようになるわけで、やはり戦争の危険は前より増す。もしくは武力の多い少ないが、公正さや道義より優先する国際社会になってしまうだろう。武器が平和をつくるなんて嘘に決まっている。

 幸い、オーストラリアへの売り込みは頓挫したようだ。けれども、三菱電機がイギリスとの共同開発を図る空対空ミサイル「ミーティア」改良型をはじめ、他にも日本の武器輸出はいくつも進んでいる。

 今回のような地元に密着したアクションでは、工場に勤める人々の目の前で行動するし、行動する人の身近にも、企業の関係者や、家族がいたりする。東京のような遠く離れた大都市で活動することも必要だけれども、たとえ規模は小さくても、こういった地元の活動のインパクトは大きいと感じた一日だった。生活の場で抗議を行うことには勇気がいる。それだけに、その抗議の意味は重い。

(報告:戸山灰/武器輸出反対ネットワーク)

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